メタンとは 温室効果ガスであり、天然ガス資源でもある化合物について

バイオマス

メタンは炭素と水素が結びついてできる化合物です。

炭素原子1個に、水素原子が4個くっついています。

無色・無臭で、人に対する毒性はありません。

メタンは温暖化を促進する温室効果ガスの一種で、排出量を抑える必要があります。

しかしそれでいて、温暖化を抑制する天然ガス資源としての側面も持っています。

この記事では、そのような二つの顔を持つメタンについて紹介します。

温室効果ガスとしてのメタン

メタンには温室効果があり、このために地球温暖化の原因のひとつとなっています。

と言っても、二酸化炭素に比べるとその影響力はずっと小さく、温室効果ガス全体の2.4%程度です。

2017年のそれぞれの排出量は以下になります。

温室効果ガス 排出量(百万トン)
二酸化炭素 1191
メタン 30.5

※排出量に地球温暖化係数をかけ、二酸化炭素量に換算した数値です

このように、温暖化に対するメタンの影響力は限られているのですが、一方で、二酸化炭素の25倍もの温暖化効果を持っていることから、なるべく排出しないですませるのに、こしたことはありません。

まとめ

・メタンは温室効果ガスのひとつ
・二酸化炭素と比べると、温暖化への影響力はかなり小さい

都市ガスで使われる

メタンはエネルギー資源としても活用されており、都市ガスの90%以上はメタンが占めています。

都市部でコンロから出てくるガスのほとんどはメタンで、身近なガスなのだと言えます。

メタンを含むガス資源は、天然ガスと呼ばれています。

天然ガスは油田や炭田などから採集することができます。

日本で生産されているのは3%で、ほとんどを輸入に頼っています。

日本の周辺海域にはメタンを含む結晶体である、メタンハイドレートという資源が存在しており、それを活用することで、生産量が増えていくことが期待されています。

天然ガス発電

それ以外には、火力発電所でもメタンを含む天然ガスが使用されています。

これを天然ガス発電と言います。

天然ガスも燃焼すると二酸化炭素を排出するのですが、石油や石炭などに比べると、排出量が半分程度に抑えられるため、代替資源として利用量が増えていっています。

また、石油・石炭と比べると、大気汚染をもたらす窒素酸化物や、硫黄酸化物も少なくなるというメリットもあります。

燃焼時の排出量の比較 石炭を100とした時の割合

資源の種類 二酸化炭素 窒素酸化物 硫黄酸化物
石炭 100 100 100
石油 80 70 70
天然ガス 57 40 0

このように、硫黄酸化物にいたっては0となっています。

最近では太陽光や風力といった、再生可能エネルギーへの転換が進みつつありますが、天候や時間帯によっては出力が下がるため、補助となるエネルギー源が必要となります。

これには火力発電が用いられることが多いのですが、そこにも石油・石炭よりも天然ガスを使った方がいいのではないかと考えられています。

2014年の時点で、火力発電における天然ガスのシェアは46%になっています。

バイオガス発電

それ以外には、生ごみや家畜のふん尿などを発酵させてメタンを発生させ、発電を行うバイオガス発電も行われています。

これは生物資源を利用して発電を行うバイオマス発電の一種で、農業や畜産業が盛んな北海道を中心として、取り組みが行われています。

具体的には、排泄物などを収拾して嫌気環境(酸素のない環境)に置き、細菌を用いて発酵させ、メタンガスを発生させます。

それを収拾し、燃焼させて電力を生み出します。

また、発生する熱をビニールハウスで利用したりもしています。

そして発酵し終わったあとの残留物は、肥料として用いることができます。

このように、農村地域でエネルギーを循環させる手段としてメタンが生成され、活用されています。


【バイオガス発電が行われている、北海道十勝にある鹿追町環境保全センター】
出典:資源エネルギー庁ウェブサイト

まとめ

・メタンは都市ガスで主に使われている
・石油や石炭などに比べると、二酸化炭素や窒素酸化物などの排出量が少ない
・廃棄物を発酵させてメタンを発生させ、電力や熱源として活用することもできる

デメリット

このように、メタンの活用にはメリットもあるのですが、いくつかのデメリットもあります

採掘が地震を誘発する

天然ガスを採掘する際に、高圧で水を注入するのですが、これによって地盤がゆるくなり、地震を誘発することがあります。

新潟中越地震は、この影響があると言われています。

アメリカではシェールガスと呼ばれる天然ガスを採掘していますが、これによって地震が増えている、という指摘があります。

2012年のデータによると、採掘地域であるアメリカ中部では、M3以上の地震の回数が10年前と比べて6倍になっています。

環境汚染をもたらす

採掘の際に用いられる化学物質や、排出されるメタンガスによって、大気汚染や水質汚濁が発生することがあります。

この時に大気中に流れ出すメタンは、温暖化の原因になります。

輸送と保存のコストが高い

天然ガスは輸入する際に液化するのですが、そのための設備やタンカーが必要になります。

また、保存のためには冷凍する必要があり、このために使用するまでに時間がかかると、コストが高くなります。

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