一酸化二窒素とは 温室効果ガスでもあり、麻酔でもある化合物

地球温暖化

一酸化二窒素は、窒素と酸素で作られる化合物です。

2つの窒素原子と1つの酸素原子で構成され、化学式はN2Oです。

亜酸化窒素とも呼ばれます。

温室効果ガスの一種で、二酸化炭素と比べると300倍近くの温室効果を持っています。

大気中の寿命は121年で、一度放出されると長期間に渡って温室効果をもたらし、温暖化の原因となります。

自然環境では海洋や土壌から放出されますが、それ以外に窒素肥料や、ロケットエンジンなど内燃機関の燃料・推進などに用いられています。

また、食材をムース状に加工するための調理用途でも使用されています。

近年では、世界的に平均濃度が増大する傾向にあります。

温室効果ガスとして

一酸化二窒素は赤外線を吸収する性質を持ち、地表に温室効果をもたらしています。

このため、温室効果ガスの一種となっており、排出量を抑制することが求められています。

温室効果ガスはそれぞれ温暖化への影響力が異なっているため、地球温暖化係数という指標を用いてそれを示しています。

二酸化炭素を1として基準にすると、一酸化二窒素は298になります。

これは一酸化二窒素を1トン排出すると、二酸化炭素を298トン排出するのと同じくらい温暖化に影響する、ということになります。

このことから、一酸化二窒素は温暖化をもたらす力が非常に強いガスなのだと言えます。

2017年度のデータによりますと、二酸化炭素と一酸化二窒素の排出量は、それぞれ以下のようになっています。

日本の二酸化炭素と一酸化二窒素の排出量(2017年度)

温室効果ガス 排出量(百万トン)
二酸化炭素 1191
一酸化二窒素 20.4 ※

※一酸化二窒素の排出量のデータは、地球温暖化係数を用いて、二酸化炭素と同じ基準に換算した後の数値です。

このように、一酸化二窒素は二酸化炭素に比べると排出量が少なく、温室効果ガス全体に占める割合は1.6%となっています。

こうしてみると、一酸化二窒素はそれほど温暖化に影響を及ぼしていないようにも見えます。

しかしながら、温室効果が高いことから、今後も削減していくにこしたことはありません。

また、一酸化二窒素には他にも環境に対して、重大な悪影響をもたらす性質を持っています。

まとめ

・一酸化二窒素は、同じ量の二酸化炭素の298倍の温室効果を持っている
・排出量が二酸化炭素より少ないため、温室効果ガス全体でみると影響力が小さい

オゾン層の破壊や酸性雨の原因に

一酸化二窒素は紫外線を浴びると分解され、一酸化窒素を生成します。

この一酸化窒素はオゾン層を破壊する性質を持っていますので、温暖化とは別に、地球の環境に悪影響を及ぼします。

また、光化学スモッグや酸性雨の原因にもなっており、様々な公害を引き起こします。

フロンガスが規制されてオゾン層の破壊が止まったかに見えましたが、今度は一酸化二窒素が大規模に破壊している、という指摘がなされています。

この観点からも、一酸化二窒素はなるべく排出しない方がよい、ということになります。

日本での推移と、世界の平均濃度

一酸化二窒素の排出量は、日本では少しずつ低下していっています。

2008〜2017年の日本の一酸化二窒素排出量の推移

2008年が2350万トンでしたが、2017年には2040万トンにまで減少しています。

 

しかし世界の平均濃度は、毎年増加し続けています。

一酸化二窒素濃度の全球平均経年変化


出典:気象庁

日本では削減が進んでいるのですが、世界的には排出量が増加傾向にあることがわかります。

日本が対応しても、それだけで世界全体の環境が改善されるわけではないのが、こういった問題の難しいところです。

医薬品として

一酸化二窒素は人が吸引すると、陶酔させる作用があることから、笑気ガスとも呼ばれています。

そして麻酔の効果もあるため、医療でも用いられており、世界保健機関(WHO)では必須医薬品に指定されています。

必須医薬品とは、医療品の入手が難しい開発途上国でも、最小限必要とされる医薬品のリストをまとめたものです。

医療援助の際に用いられることも多く、一酸化二窒素は医薬品としてポピュラーな存在なのだと言えます。

このように、一酸化二窒素は治療の役にも立っています。

まとめ

・一酸化二窒素はオゾン層破壊や、酸性雨など公害の原因となる
・日本では排出量が低下傾向にあるが、世界的には増大している
・麻酔薬として広く用いられている