ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトという結晶構造の材料を用いた太陽電池です。
プラスチックフィルムなどの下地に塗布してペロブスカイト膜を作り、それに光を当てると発電することができます。
従来のシリコン系太陽電池は厚みがあり、曲げることができないため、ある程度広く、平たい空間でないとソーラーパネルが設置できないという制限があります。
しかしペロブスカイト太陽電池は、薄い膜でも十分に発電できます。
【プラスチックフィルムで作られたペロブスカイト太陽電池】
このため、折り曲げることが可能なほどの薄さで太陽電池が作成でき、より多様な場所に設置できるようになります。
例えばビルやマンションの壁、窓ガラス、車の屋根、テントやビニールハウスの屋根などにも設置することが検討されています。
ペロブスカイト太陽電池は、塗布する量を減らすことによって透明度を変更できるため、光を通しつつ発電することもできます。
このため、窓ガラスやビニールハウスでも使用が可能なのです。
その上、折り曲げても性能が安定している、という性質も備えています。
このような優れた特徴を持つことから、世界各国で開発が進められており、2020年代には実用できるとされています。
【ペロブスカイト太陽電池の積層構造】
出典:科学技術振興機構
実用化に向けての動きと課題
ペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授らによって開発されました。
当時のエネルギー変換効率は3.9%でしたが、毎年のように改善が進み、2018年の時点で27%を達成しています。
これはシリコンパネルの25%を上回る数値で、その上、製造コストもシリコンの半額以下のものが登場しています。
このため、実用化のための課題はほぼクリアされつつあります。
さらに改善の見込みがあり、進展速度が速いことから、ペロブスカイト太陽電池は、近い将来に、太陽光発電において主流の素材になると予想されています。
このため、企業や投資家たちの動きも活発になっています。
現在は変換効率が30%を超え、耐用年数が30年以上となる、信頼性の高い素材の研究開発が進められています。
また、人体に有害な鉛を使わない素材の開発も進行しています。
ペロブスカイト太陽電池が実用化すると、あらゆる場所に設置でき、より少ない面積で電力が得られる、高度な太陽電池が一般に普及することになります。
これによって再生可能エネルギーの利用が進み、二酸化炭素を削減し、温暖化の抑制に寄与することが期待されています。