洋上風力発電とは メリットや課題について

発電

洋上風力発電とは、主に海洋上で行われる風力発電のことです。

海洋上の他、湖や港湾内にも風車が設置されることがあります。

この分野をリードしているのは欧州で、デンマークやオランダ、イギリスなど、海に面している国々で普及しています。

また、アジアでは中国で普及しています。

洋上風力発電で用いるタービン(発電機)はドイツのシーメンス・ウィンド・パワー社や、デンマークのヴェスタス社などが主に生産しています。

洋上風力発電のメリット

どうして洋上に発電機を設置するのかというと、洋上は陸上に比べると安定して風が吹くため、発電にかかるコストを下げることができるからです。

また陸上と違い、一つの区域に収集して発電機を設置できるため、管理・維持がしやすくなるというメリットもあります。

集中的に設置された海域は、「洋上ウィンドファーム」と呼ばれています。


【デンマークの洋上ウィンドファーム】

また、風力は再生可能エネルギーであるため、枯渇する心配がありません。

そして二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化を促進させないというメリットもあります。

洋上風力発電は、日本のように陸地が限られており、かつ海に面している島国では、適した発電方式だと考えられています。

このため2018年ごろから、大規模な洋上風力発電所の計画が立てられるようになりました。

日本での建設計画

東京電力ホールディングスは、千葉の銚子沖に最大で100基程度の発電機を設置し、合計で100万kWh(キロワット時)の出力を得るという計画を立てています。

これは原発1基に相当する電力量で、予算は数千億円の大規模な計画です。

将来的には、洋上風力発電を200〜300万kWhまで拡大するという目標を掲げています。

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イギリスの計画

日本と同じく海洋国家であるイギリスでは、2030年までに3300万kWhの洋上風力発電所を建設することを計画しています。

事業規模は13兆円で、7000基の洋上風車を設置することになっています。

これは国の全消費電力の3分の1をまかなう規模で、大々的な取り組みが行われています。

日本のメーカーでは、三菱重工がこの計画に参加しています。

一方でこれは、イギリスは太陽光や水力、地熱などが利用しづらい環境にあるからこそ、風力に集中しているということでもあります。

適した海域

洋上風力発電には、風が安定して吹き、発電機を設置するための支柱を立てるのに適した、遠浅の海が広がる海域が適しています。

日本では千葉の銚子沖や、秋田の秋田港・能代港、福岡の北九州港などで具体的に計画が進んでいます。

課題

洋上風力発電が計画されている地域では、以下のような点が懸念されており、住民や環境保護団体、漁業関係者などから建設への反対意見が提出されることがあります。

・騒音公害によって健康被害が出ないか
・景観を損なわないか
・魚類や鳥類の生態に悪影響が出ないか
・悪天候や災害時に安全性が確保できるのか

普及のためにはこういった課題に対し、適切に対応する必要があります。

なお、洋上風力発電の風車は、居住区域から距離がある場所に立てられるため、騒音公害は発生しにくくなっています。

また、陸上に比べると目立ちにくいため、景観への影響も少なくなっています。

災害や自然環境への対応

日本では欧州と異なり、台風や地震などの自然災害が多く、太平洋側は海のうねりが大きいという、環境上の特徴があります。

このために発電機の建設や維持にコストがかかりがちになる、という課題があります。

メンテナンスの課題

天候が悪いと発電機のメンテナンスが行えないため、洋上風力発電では、稼働の信頼性を確保しづらいという課題があります。

これには遠隔監視システムによって、故障予知や診断も行えるようにすることで、信頼性を向上させる取り組みが必要となります。

浮体式洋上風力発電

洋上風力発電を行うために使われる洋上風車は、円柱などの基礎を海中に設置し、その上に柱を立て、ローターとタービンを設置して発電します。

しかし水深が50mを超えるとコストが高くなるため、水深50〜200mの海域では、浮体式風力発電が用いられます。


【ポルトガルの浮体式風力発電】

これは洋上に、浮かぶ構造物を設置し、その上に風車を立てる方式です。

流されないよう、海底に小さな基礎をつくり、そこからケーブルでつないで係留します。


【係留システムのモデル】
画像の出典:wikipedia

日本は遠浅の海岸が少ないため、この浮体式風力発電に適した地域ではないかと見られています。

実証実験はすでにはじまっており、2011年には長崎県の椛島かばしま沖に、2014年には福島県楢葉ならは町沖に設置されています。

今後、国内外で事業展開をするため、技術開発や安全基準の策定などが進められています。

海外では2017年から、イギリスのスコットランド沖で、商用の浮体式風力発電所が稼働しています。